LESSON 3

繰り上げ受給は本当に損か?失業手当・手取りで考える

「額面81歳の壁」だけで判断すると損をするかもしれません。順番と手取りで考え直します

基本情報

65歳時点の年金見込み額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を分けて入力してください。失業手当との調整で止まるのは老齢厚生年金の部分だけだからです。

満額の目安:847,300円(令和8年度)
ねんきん定期便の内訳を見て入力
この年齢で退職する前提
65歳受給の年金合計(年額)

STEP 1 失業手当 vs 高年齢求職者給付金

65歳より前に老齢厚生年金を受け取っている状態で、失業給付(基本手当)を受けるための求職の申し込みをすると、老齢厚生年金の支給が停止されます(老齢基礎年金は対象外)。 ここでは「60歳で自己都合退職し、基本手当を受け取り切ってから繰り上げ請求する」場合と、「65歳定年まで働き、高年齢求職者給付金(一時金)を受け取ってから65歳受給する」場合を、賃金から試算した給付額で比べます。 まず給付金だけを比較し、次に60〜67歳あたりの累計額の動きを見ます(想定寿命までの通算はKPIカードを参照)。

万円/月(直近6ヶ月の平均目安)
10年未満=90日分、10〜20年未満=120日分、20年以上=150日分
給付金だけを比較(基本手当 vs 高年齢求職者給付金)
60〜67歳の累計額の推移(給付金部分と年金部分を色分け)

STEP 2 手取りベースの損益分岐点

65歳になると税金の計算上引ける金額(公的年金等控除)が60万円から110万円に増えます。これは「繰り上げで先にもらっている人」も「65歳から普通にもらう人」も、65歳になれば同じように恩恵を受けます(年齢で決まる制度で、いつ請求したかは関係ありません)。 ただし、この+50万円の控除は年金額が少ない人ほど「割合」で見た効果が大きくなります。そのため65歳以降は、繰り上げ組の手取りが額面のとき以上に底上げされ、普通にもらう側との毎年の差額が額面のときより縮みます。 普通にもらう側が追いつくスピードが遅くなる分、手取りで見た損益分岐点は額面で見た場合より少し後ろにずれます。下のグラフとKPIで、実際に何歳でずれるかを確認できます。 (YouTube情報の通りにならないので検証中)

住民税非課税ライン(単身・目安)のチェック
単身世帯・1級地(大都市等)の基準です。65歳未満は年金収入105万円以下、65歳以降は155万円以下が目安(2級地152万円・3級地148万円)。 配偶者の扶養や自治体の級地区分によって基準は変わります。正確な金額はお住まいの市区町村にご確認ください。

STEP 3 早期受給+運用 vs 65歳受給

繰り上げ受給で受け取った年金の手取りを生活費に使わず全額運用に回した場合の資産評価額と、 運用せずに受け取った分をそのまま積み上げた場合の累計受取額(65歳・標準受給/75歳・最大繰り下げの2パターン)を比べます。 利回りは一定ではなく上下する前提でご覧ください。

3.0%

繰り上げ受給の注意点

取り消せません。一度繰り上げ請求すると、あとから65歳受給や繰り下げに戻すことはできません。
障害年金が請求できなくなります。繰り上げ後に病気やけがで障害状態になっても、原則として障害基礎年金・障害厚生年金は請求できません。
寡婦年金は請求できません。また65歳になるまでは、遺族厚生年金と自分の老齢年金を選択する場合の扱いにも制限があります。持病がある方・遺族年金が関係する方は、繰り上げ前に必ず年金事務所で確認してください。

📌 このシミュレーションから読み取れること

この試算の前提
・繰り上げ受給の減額率は1ヶ月0.4%(2022年4月改正後、上限60ヶ月=24%減)。老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに同じ率が適用されます。
・失業手当(基本手当)は65歳より前に老齢厚生年金を受給していると、求職の申し込みをした月の翌月から支給停止となります(老齢基礎年金は対象外)。実際は停止と事後精算の仕組みがありますが、ここでは「先に失業手当を使い切ってから繰り上げ請求する」場合との比較として簡略化しています。
・基本手当日額は、厚生労働省が公表する令和7年8月改定の賃金日額・給付率表(60〜64歳は45〜80%、高年齢求職者給付金は29歳以下の表を適用)から試算しています。賃金日額は「退職前の月収×6ヶ月÷180日」で概算しています。自己都合退職の所定給付日数は一般受給資格者の表(10年未満90日・10〜20年未満120日・20年以上150日)、給付制限期間は令和7年4月改正後の原則1ヶ月(+待期7日)で計算しています。
・手取り計算は、公的年金等控除(65歳未満は収入130万円未満で60万円、65歳以上は収入330万円未満で110万円、それ以上は逓増する速算表)、所得税の基礎控除(令和8年分・合計所得金額に応じて58万〜104万円)、住民税基礎控除(43万円)、国民健康保険料の概算式、介護保険料(第9期・令和6〜8年度の65歳以上の全国平均基準額=年74,700円)をもとに試算しています。介護保険料は40歳から64歳までは国民健康保険料に上乗せされ、65歳以降は年金天引きの別建てに変わりますが、負担そのものが65歳から新しく発生するわけではないため、このツールでは60〜64歳・65歳以上を通じて同じ年74,700円を定額で計算しています(国保の「介護分」だけを切り出した全国平均の料率は確認できなかったため、65歳以上の全国平均額を代用した近似値です。実際は所得段階で0.3〜2.4倍程度に増減し、自治体差も月額5,568〜9,249円と大きいため、あくまで目安です)。単身・年金以外の所得なしの前提の概算値です。
・正確な金額や制度の詳細は、年金事務所・ハローワーク・税務署でご確認ください。
・繰り上げ受給で先取りした分を資産運用に回した場合の試算は、Lesson5(資産寿命シミュレーション)で扱っています。

✅ 理解度テスト

このLessonの内容を振り返るチェックリストです。理解できた項目にチェックを入れましょう。

入力項目のルール
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会社を辞めたあと、次の仕事を探している間にもらえる「失業手当」というお金があるが、65歳より前に厚生年金を繰り上げてもらい始めると、この失業手当がストップしてしまう。同時に両方をもらうことはできない仕組みになっている。

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65歳になってから辞める場合は「高年齢求職者給付金」という一時金(30日分か50日分)がもらえ、これは年金と一緒にもらってもよい。一方、65歳より前に辞める場合は「基本手当」(自己都合なら90〜150日分)がもらえるが、この期間は年金の繰り上げ受給と同時にはもらえない。どちらが得かは、賃金や勤続年数によって変わる。

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一度「年金を早くもらい始めます」と手続きしてしまうと、あとから「やっぱり65歳からにします」と変更することはできない。しかも繰り上げたあとに万が一病気やケガで障害を負っても、障害年金がもらえなくなったり、配偶者を亡くした場合の「寡婦年金」がもらえなくなったりすることがある。だから繰り上げは慎重に決める必要がある。

グラフから読み取れる内容
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「額面」は税金などが引かれる前の金額、「手取り」は実際に使えるお金。早くもらうか65歳からもらうか、どちらが得かを比べるとき、税金を考えない「額面」で比べた場合と、税金を考えた「手取り」で比べた場合とでは、「得になる年齢」が変わってくる。グラフではその両方の年齢を確認できる。

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65歳になると年金の控除額(税金の計算で差し引ける金額)が増えるため、65歳以降の年金は税金の面で少し有利になる。そのため、税金を考えない単純な金額(額面)だけで比べるよりも、実際に手元に残るお金(手取り)で比べたほうが、65歳から受け取ることの良さがより見えやすくなる。だから2つの「損益分岐点」の年齢がズレる。

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Lesson2で出てきた「税金がかからない金額のライン(壁)」は、60〜64歳と65歳以降で違う。年金を繰り上げてもらっている60〜64歳の間は壁が低め(105万円)で、65歳になると壁が上がる(155万円)。同じ人でも、年齢によって「税金がかからないライン」が変わるということ。